Guaguancoの向こうにCuba を見た…?!
by Hide 1985.11.24
Guaguanco-この世界ではワワンコと読むのが正しい1。このワワンコこそは最もキューバ的といえるリズム、形式である。2
ワワンコはサルサでも数多く取りあげられ、また最近では、ブレイク等部分的に使って効果をあげている例も見られる。
ワワンコの基本は、音程の異なる三つのコンガ(音程の低い順に”トゥンバ””セグンダ””キント”と呼ぶ)でたたきだされるポリリズムと、リードVoとコーラスのかけあいの形となる歌から構成される。トゥンバとセグンダが基本のリズムをつくり、その上にキントのソロと歌が乗る。ワワンコの基本は、<譜例>のような具合であるが、実際は、もっともたった感じとなる。
<譜例>(図のBPMは参考、実際によく演奏されるのは160ぐらいか?)
★印のところにアクセントが来るのが独特のノリを生み出す源となっている3。このワワンコの大御所がキューバのロス・パピネスで、数多くのレコードでワワンコの真髄を聞かせてくれる。①
ワワンコのルーツは、キューバの黒人音楽‶ルンバにあるといわれるが、そのあたりの関係を体現してくれるのがシェラ・マエストラの②「ベレンのルンベーロ達」である。
サルサの中でのワワンコの名曲といえばセリア・クルースの③「キンバラ」がある4。ただし、この曲の構成はサルサ(ソン・モントゥーノ)のそれであり、よりキューバ的なワワンコとしてはティピカ 73の④ 「シオマラ」が代表例である。もっとも、この曲はもともとキューバの曲らしいので5あたりまえなのだが、この曲の魅力はモントゥーノに入る所のブレイク部分のワワンコで、スリリングな加速がすばらしい。
全編ワワンコでありながら、まったくもキューバを感じさせないのが、ルベン・ブラデスの⑤「ブスカンド・アメリカ」である。これはメロディライン、コーラスのハーモニーによるところが大きい。 つまり、リズムと歌の2つが揃ってはじめてワワンコらしいワワンコとなるわけで、その風味をうまく生かして成功した例にエディ・パルミエリの⑥「コロンビア・テ・カント」がある。
他にもブレイク等にワワンコパターンを入れるのはよくある手だが、その効果は使い方によって様々である。
例えばパチェーコ&メローンの⑦「アンテス・ラ・トゥベ・ジョ」、この曲はブレイクで一気にキューバへとひきずりこむ独特のくささを出している。これにくらべ、ナティーボの⑧「ソイ・ナティーボ」はヒバーロ節の味をひきたてるのに一役買っている。これが、トミー・オリベンシアとなると、そういったくささはまったくなく、いかにも都会風のしゃれた感覚で、フランキー・ルイスの声をきわだたせている。(クラーベが逆ということもあるが…) ⑨
サルサ・ミュージシャン以外でも結構ワワンコを取りあげているが、だいたいよく聞かないとわからない。そんな中で、とりあえず、松岡直也とサンタナのワワンコについて紹介しておこう。
まず、松岡大先生。最近の作品では、12インチシングル⑩「九月の風」オリジナル・バージョン<ー判読不能ー>である。 Newアルバムでは①「ドリフティン・オン・ザ・ウェイブス」がやはりクワンコである。
サンタナの方はといえば、久々の新プも結構ヒットしていてディスコ等でも結構かかっているようだが、⑫「ブラザー・フッド」⑬「タッチ・ダウン・レイダース」が実はワワンコである。
①Oye Men Listen…Guaguanco!/ LOS PAPINES BR-105 BRAVO
②「A LOS RUMBEROS DE BELEN」われらの時代 (¡Y SON ASI!)/SIERRA MAESTRA VIL-6182 ビクター音産
③ 「QUIMBARA」CELIA & JOHNNY/CELIA CRUZ Y JOHNNY PACHECO XVS-31 VAYA
④ 「XIOMARA」SALSA ENCENDIDA/TIPICA 73 JMIS-1062 INCA
⑤ 「BUSCANDO AMERICA」BUSCANDO AMERICA /RUBEN BLADES Y SEIS DEL SOLAR 9-60352-1 ELEKTRA
⑥ 「COLOMBIA TE CANTO」LUCUMI MACUMBA VOODOO / EDDIE PALMIERI JE-35523 EPIC
⑦ 「ANTES LA TUVE YO」FLYING HIGH/ JOHNNY PACHECOY Y MELON JMVS 100 VAYA
⑧ 「SOY NATIVO」CONJUNTO NATIVO 1831 TTH
⑨「TE VI」TOMMY OLIVENCIA AMF-2222 TH
⑩「THE SEPTEMBER WIND」/NAOYA MATSUOKA M-3602 ワーナーパイオニア
⑪「DRIFTIN’ ON THE WAVES」SPLASH & FLASH / NAOYA MATSUOKA M-12522 ワーナーパイオニア
⑫「BROTHERHOOD」⑬「TOUCH DOWN RAIDERS」BEYOND APPEARANCES/SANTANA 28AP2990 CBSソニー
- Guaをワと発音するのは、どうやらキューバ訛りであろう ↩︎
- その後の調査で「Guaguancó」というのは元来Rumbaの一つの形式を表すものというより、歌の形式を表すものだったらしいことが判明した。https://lelolai.fun/6827/ ↩︎
- ここはBajo(手のひら全体で皮を押さえ込んで発する胴鳴りのベーストーン)である ↩︎
- ただし、セグンドのアビエルト(オープントーン)が入るのがClaveの3部分にあり、譜例に示すパターンとは反対である。 ↩︎
- 1976年の盤 Grupo Irakere(Areito – LD-3660)で、IRAKEREがXiomaraを録音している ↩︎
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