私の愛聴バン
by おぐりまさゆき 1983.9.9
ぼくの場合「サルサ」という音楽の前にラテン音楽の打楽器があった。そこで、愛聴盤を語るにしても、まず楽器に登場してもらうことになる。
ぼくは学生時代(と言っても16年前)から、打楽器を演奏してきた。
いろんな音楽をやったが、当時はハービーマンのラテン・ジャズが好きだった。ハービーマンのフルートも良いが、バックのリズムが何とも言えない魅力だった。今にして思えば、当時のハービーマン・バンドには、パタートやウィリー・ボボといったラテン打楽器の大家がいたのだからリズムがバッチリなのは、むしろ当然である。
特に興味深かったのは、ハービーマンはボッサ・ノバを中心にしたブラジル音楽を演奏していたが、バックはバッチリラテン(このころはまだサルサという言葉はなかった)であったこと。この事実は、当時出版された見砂直照先生の名著「ラテン・リズム入門」を読むうち、はっきり了解できた。
ところでパタートである。3年前彼が来日した時、その名前も懐かしかったが彼のコンガ奏法も懐かしかった。なぜなら、彼の音楽は、16年前必死にコピ一したハービーマンの「黒いオルフェ」や「ディサフィナード」のバックに流れるそれとても変わっていなかったのだから…。
さて、前おきが長すぎた。ぼくの愛聴盤、選ぶのに苦労したが、ここはひとつ ラテン打楽器に敬意を表しまず奏者を決めた。
ティンバルの王様ティト・プエンテ、レコードは「オメナーへアベニー」(Tico JMTS 1425)、もう一枚同じく「ダンスマニア80」(Tico JMTS 1439)。
前者は78年グラミー賞盤、オーソドックスな内容もさることながら、音質的にもサルサ盤としては最高。
後者は音を少なく厳選したティンバルソロ、随所に出てくるティンバリトス(小型ティンバル)ソロが何とも心地良い。
プエンテの音楽には心理療法的な効果がある。精神衛生のためにも一聴あれ。
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