Idilio

Disc/Music Guide

Willie Colonの代表曲として有名なこの曲。
この曲の歴史、Willie Colónが取り上げたときの経緯、2ndo VozとCoro-Cantaが付いてサルサの名曲が誕生したときについて語る解説動画がありました。これを見れば、Idilioという曲の誕生、発展がほぼわかるのですが、もちろん全編スペイン語です。

◆オリジナル(Coro-Cantaがない時代)

“Idilio”
プエルトリコ生れのティティ・アマデオ Titi Amadeo(Alberto Amadeo Rivera, 1903-1968年)という人の”Idilio”が原曲です。

発表年などの情報が見つかりませんでしたが、1930年前後にはすでに歌われていたのではないでしょうか?
Puerto Ricoといえば有名なJibaro歌手のChuíto El De Bayamón もJohnny el Blavoとともに残しています(1976年)。ここでは、曲名が”Quisiera”となっています。

あのFrankie Ruizを看板に売り出した時期のOrquesta La Solución1980年のアルバムで取り上げています(歌唱はもう一人の歌手Jaime “Megui” Rivera )

◆Willie Colónの初出

Hecho en Puerto Rico 1993に収められた。
この曲におそらく初めてCoro-Cantaパートが付き、また2ndo Vozでのハモリが付けられたのが、Willie Colónの代表曲ともなり、後に各種カバーバージョンが生まれ、Cubaにも渡り派生展開されていくきっかけとなったバージョン。
イントロなど歌前のフレーズがバストランペットで演奏されるのがWillie Colónらしいが、間奏のソロは、普通にトロンボーンで吹かれている。音色といい、フレージングといいまさにWillie Colón節。
Segundo Vozの Angel “Cucco” Peñaの低音ハモリが実に魅力的で、Andy Montañezにも似た声だったことから、「Andy MontañezとのDuo」だと思い込んだ人も多いらしい。

◆Coro「Soñando Siempre contigo」の導入

この曲をやがてCubaの歌手Laitoが取り上げることになった。
Laito Y Su Sonora* – Sonaron Los Cañonazos 1997
歌手でリーダのLaito Suredaは Conjunto CaneyConjunto CasinoLa Sonora Matanceraなどでの活動実績がある人。この曲を取り込んだ1997年のアルバムが売れたようだが、残念ながら1999年(もしくは1998年)に亡くなった。
トロンバンガ編成だったWillie Colónの一大ヒットをソノーラ編成で取り上げ、さらに後ろに「Soñando Siempre contigo」というCoro-Cantaを追加した。以降、Cubaでこの曲が取り上げられている場合には、多くの場合「Soñando Siempre contigo」のCoro-Cantaが入っている。

Estanislao “Laíto” Suredaについては以下の動画でも解説されている。

◆異説?Manuel Romero作

。。。と、ここまでは、多分定説。ところが次のLeoni Torres版を調べている過程で異説の系譜を見つけてしまった。Manuel Romeroが作者であるとする記述が複数みられたのである。

とっかかりはShazam。
https://www.shazam.com/es-es/song/951815781/idilio
歌詞が掲載されているのだが、最下行あたりに「Writer(s): Manuel Romero」とあるのだ。
この「Manuel Romero」は、どうやらタンゴ作詞家にして映画監督のアルゼンチン人(1891-1954)のことを言っているのだが、もう少し調べたところ、どうやら同名曲を発表しているらしい。

そして、MusicBrainzというサイトによれば

Annotation
Sometimes Titi Amadeo’s famous Idilio is falsely credited to Manuel Romero; this is a different song.

とあるので、「よくある間違い」であるらしい。
https://musicbrainz.org/work/b244f615-c338-4fef-a4f2-eaa2661ea309

残念ながらManuel Romero作の「Idilio」がどういう曲なのか、音を聴けるサイトは見つかっていないので判断しようがないが、このタンゴ作詞家によるIdilio録音の記録にキューバ録音のものがあるのが話を少しややこしくしている。

1935-02-05 Nilo Menéndez Orchestra
1957 Ernesto Duarte y su Orquesta Cuba録音
録音年不明 Dúo Llamas/Barroso

⇒その同名異曲を見つけました!
Idilio · Dúo Llamas/Barroso

そんなよくある間違いの一つであろう街頭演奏動画のタイトルで謳われた例がこちら。

Leoni Torres版

Argentina版

フラメンコCanteの有名どころらしいArgentina(という名前ですが、スペイン人です)がCuba音楽をやるという企画。別途アルバム版もあるが、こちらのプロモビデオ版がなかなかいいので、こちらをご紹介。Diego El Cigalaの例もあるが、フラメンコ特有の絞り出すようなCanteでCuba音楽を歌われるのも味があっていい。

Arteson de Cuba セステート版

この曲をセステート、セプテート編成のSonで演奏している映像は実にけっこう多く見られ、だいたいLaito版を下敷きにしている模様。代表例としてこちらを挙げておく。

Alberto Barros版

サルサフィールドのアーティストによる演奏も多くあげられているが、最後に、近年最高のものと思えるこちらを一つご紹介しよう。

Tributo a la Salsa Colombianaといった過去の名曲トリビュートシリーズを出しているAlberto Barrosが、なかなかに艶っぽいLuzEleとのDuoで2023年に出したもの。Willie Colón版を下敷きとしつつも、Tpも入った新アレンジも織り交ぜ、DuoのハモリもWillie ColónよりLuzEleとのDuoを活かすものに変わっており、Coro-Cantaもハモリで聴かせる憎い演出である。

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